神は細部に宿る

神は細部に宿る、らしい。建築物でディテール(細部のこだわり)が全体の出来栄えをも左右する、ような意味で、さしずめ私の仕事でいえば、田んぼの草取りがこれにあたるようだ。

 

田植をしてから一か月が過ぎ、中干し(土用干し)の季節がやってきた。田んぼの入水を止め、土にヒビが入るくらい干すことをいう。水を切らすことによって、横に広がる分けつや背丈の伸びを抑制するとともに、根をしっかり張らせ倒伏しないようにする。また、土の中のガス調整も、その効能のひとつらしい。

 

ただ水を切らして干せばいいのであれば、米作りは楽なものだ。干す前にやらなければならないことがある。そう草取りである。土ががびがびに固くなった後では草は抜けない。そうなったら刈るしかない。

 

根から抜くことを”草取り”といい、途中で切断することを”草刈り”という。専門用語は正しく?使いたい。米作りを始めて3年目、私も細かい言葉じりにこだわるようになった。

 

さて、田んぼの草取りの話だが、これがナカナカな作業である。土はまだぬかるんでいる。周辺には様々な虫達がいる。やっかいなのはブヨ(ブト)である。したがって、麦わら帽子の上に虫除けの網をすっぽり被り、一歩一歩の作業となる。

 

”敵群”の本体は稗(ヒエ)である。草取りのまたの名を”ヒエ取り”とも言うぐらい、田んぼに生える草中の草がヒエである。ヒエは穂を見れば、明らかに米ではなくヒエと認識できる。しかし、穂が出る前の茎や葉っぱは稲と瓜二つ、まったく見分けがつかない代物である。ちなみに師匠のKさんに聞いても「なんとなく性根の悪そうなやつだ」、それでもしつこく聞くと「ワシもようわからん」。

 

とりあえず雑草としてのヒエを定義する必要がある。田植した稲は碁盤の目のように縦横に整列しているため、この列から外れた物をヒエと”定義”し草取りに精を出す。敵もさるもの、稲によりそうように生えている輩もいる。そんな輩はこの段階では見逃すしか私には手はない。

 

ヒエは稲とだいたい同じような背丈で伸びてくる。いうまでもなく、植物界は光合成が命である。稲の最大の敵であるヒエは、日陰を作り、風通しを悪くし、さらに稲に与えたはずの貴重な土の養分をかすめとっていくのだ。人から見ればゆるべからず、なのだが自然界は”早い者勝ち”の競争原理でできている。

 

私はヒエそのものが嫌いなわけではない。ヒエも稗となり収穫できれば立派な雑穀となる。現に私の食卓にも雑穀ごはんとして米と一緒に日々食している。どうせ生えるなら一か所にまとまって生えてほしい、といっているだけなのが・・・

 

草取りをやっていると様々なことがわかる。まず稲の背丈がけっこうばらついているのだ、これは苗作りでのばらつきや肥料成分のムラがもろ影響している。”苗半作”というが、まさしく苗の問題は末代?まで影響するのだ。また、土のぬかるみの深さも場所によってかなり違う。これはトラクターで田を起こすときのムラである。問題だらけだということが一目瞭然である。

 

整然と並び、草も無く背丈も揃って美しく見える田んぼは、単に見栄えが良いというだけだはないのだ。恥ずかしいから草を取る(刈る)のではなく、しっかり管理するために必要だということなのだろう。私にはまだまだ届かぬ世界ではある。

 

長年、工場勤めで工業製品の生産技術(良いものを安く早く作る技術)を生業としてきた私である。その品質と生産性の基本は5S(整理、整頓、清潔、清掃、躾)にあった。5Sを励行し、いかにムリ、ムラ、ムダを無くしていくかが勝負であった。日本の工業製品が世界に確たる位置をしめたのはまさにそこにあったと思う。

 

そして、そのルーツはといえば”恥の文化”を背景にした米作りであり、田んぼに這いつくばってこつこつと草を取る、そこに日本人のDNAの中核があるような気がする。 

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