生死をさ迷う

悪夢のような週であった。2月も終わりになった月曜日、鼻水たらたらで近くの水路の補修作業をやっていた。「今年のは花粉はきついな~」鼻水が止まらないだけでなく、微熱があり寒気もする。そしてやたらダルイのである。たしか、30才代の花粉症にかかり始めのころ微熱が続いた時期があった。今回もこのような花粉症の症状がぶり返したのだろう、と勝手に考えていた。

 

ほんとうはこんな日に外仕事なんかしたくなかったのであるが、ご近所からの要望を受けての共同作業であり、まして私は事務方の役員で地域の世話役の一人である。したがって、休むわけにはいかない作業であった。

 

大きな花粉症マスクをしながら、動きの鈍い体にムチ打ち作業は2日間に及んだ。昼飯を自宅で済ませた後の、わずかの時間も体を横にしていた。なんとか作業が終わった翌日(水曜日)、昼には我慢できずについに布団の中へ。

 

お酒は健康のバロメーター、夕食時にも”異変”が。いつもの夕食時の晩酌はビールをコップ2杯弱の後、日本酒を少し大きめのおちょこに半分ほど。ところがこの週は違った。月曜日はビールを2杯飲んだ後、日本酒までいかない。火曜日はビールをコップ1杯でストップ。そして水曜日は、まったくお酒を受け付けなくなっていた。

 

市販の風薬を飲んでも日に日に悪化している。さすがにこれは変だ、と木曜日にようやく病院へ行き、受付で「熱があるんですけど」と言うと、「インフルエンザじゃないでしょうね?」はなから疑っている。体温計で測ると37.3度しかない。医者は話を聞くなり「検査しましょう」とそのまま別室へ。鼻の中をぐりぐりとやられた。少し時間がたった後、いきなり「B型のインフルエンザです」ときた。えーマジですか?

 

そしてその部屋の中で、タミフルと解熱剤をもらい支払いもここで済ませると、追い出されるように病院を後にした。医者の説明が、その後の私の行動を惑わせた。「明日朝には熱が引くと思いますけど、薬は最後まで飲むように」

 

夕食はほとんど食べられない。風呂にさっと入って薬を飲んでそのまま布団の中へ。それからが正に悪夢の24時間であった。夜中の12時過ぎに目が覚めると、やたら寒い、布団を重ね我慢しても耐えられない。3時過ぎに妻を起こし、「寒くてたまらん」「湯たんぽをつくってくれ」。熱を測ろうと電子体温計を取り出したら、電池切れの様子でエラー表示。薬箱のの隅から昔のアナログ体温計が出てきたので、これを脇の下にはさんだ。しばらくして体温計を見ると、なんと振り切れているではないか。

 

よくよく見ると、その昔の婦人体温計で38度がmax表示であったのだが・・・イ、イカン、体温計が振り切れている。精神的なダメージがのしかかる。昨日医者は「熱は引く」、と言ってたよな。逆に上がっているではないか。これは相当やばい。夜中だが救急車でも呼ぶか・・・と思いつつも、ただひたすら我慢しながら、ようやく夜が明けた。

 

8時過ぎに妻に送られて総合病院へ。受付で事情を話したら、な、なんと「インフルエンザと言われてタミフル飲んでいるんでしょう」「寝てるしか無いですよ」鬼のような言葉が・・・

 

私は声を振り絞った。「そうじゃなくて、熱が下がると言われたけど、逆に上がっているんです」「きつくて死にそうなんです」一晩寝ずに病と闘い、なんとか病院にたどり着いたというのに、看護師は「みんなそうですよ」「インフルエンザだから熱は出るんです」いたって冷静なのである。

 

ぐずぐず言って、ようやく診察してもらえることになった。正式な体温計で測ると39.5度。ひえーこりゃほんとに死ぬぞ。血液検査や胸部レントゲンなど検査して別室で寝ていると、やたら喉が渇く。自販機で冷たいお茶を買って飲むと、今度は心臓がバクバクしてくるではないか。呼吸も苦しい。ふらふらしながら、看護師のところに行って、や、やばいです・・・心臓が勝手に動いています・・・

 

「そうですか、血圧を測りましょう」事務的な言葉が返ってくる。そして「急にお茶を飲んだからでしょう」しばらくしてようやく医者がやってきた。「検査の結果が出ました。血液も胸も異常はありません」

「インフルエンザだから、とにかく自宅で寝ていてください」なんとも冷静な病院の対応であった。

 

結局、この総合病院では何も処方箋が出なかった。しぶしぶ?タクシーで自宅に戻り再び布団の中へ。それからがまたきつかった。何も食べる気はしない、口に入れるのは妻が買ってきてくれたヨーグルトやプリン、そして”飲む点滴”と言われてのポカリスェツトである。そして夕方には、食べ過ぎたのか?吐き気もしてきた。

 

また恐怖の夜がやってきた。今度はやたら汗をかく。もう体の制御が効かなくなっている。上がったり、下がったりで、自分の意志とはお構いなしに勝手に動いている。1時間おきくらに下着を替えた。翌朝数えるとシャツが8枚あった。妻が言う「病と闘うと言うでしょう」「頑張らないと」。しかし既に闘う気力が全面的に失せている私は「もうだめ、負けた」「降参します」・・・妻のあきれたような眼差しが刺さる。

 

あの冷静な妻も、時々様子を見に来てくれた。「まだ、死んでないぞ~」敗北感に浸りつつも最後の男の意地が・・・なんとか夜が明けると、熱は勝手に下がっていた。そして闘いに敗れた戦士の姿がそこに。

 

「タミフルで子供の異常行動が言われてたけど」「オヤジが飲むと挫折するのかね~」近くでだれかがつぶやいていた。 

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