今年の田植えは2日に分けて実施した。というのは昨年共同の田植機の一台が調子が悪く、修理したため最初に試し運転をするためである。昨年から地区の共同農業機械の管理担当をやることになり、貸出し管理だけでなく、機械そのものの不具合などにも対応しなければならないのである。
6月は1年で最も多忙な時期である。まず共同機械による畦塗り作業があり、回覧板による依頼の受付から作業スケジューリング、そして畦塗り作業・運転までのすべてである。そして田植機の準備とスケジュール管理、機械の不具合対応で何回か出動することもある。
その合間に自分の田んぼの荒代かき、本(植え)代かきを行い、そして田植機による田植えや四隅及び欠株の補植(手植え)をやるのである。自分の田んぼは1反半程度と少ないのでなのでなんとか対応できる。
自分でやる田植えも4回目となった今年、自分なりの技をかけてやることにした。自慢じゃないが私の田植のスピードは遅い。ベテランの有に2倍の時間はかかっているだろう。遅いついでに田植と同時に欠株対策をやることにした。田植機は往復しながら植えていくので、先に植えた列の欠株がわかる。そこで思い切って田植機を止め、欠株発見の都度降りてからその箇所を手植えしていくのである。
田植機でやった後、欠株箇所に歩いていくのはとても辛いので、トータルでみればこの方が楽だ。ただ、こんなことをやっている人は私以外だれもいない。ほとんどの人は4隅の補植はするが、欠株を植えるため中に入っていくことはしない。多くの人は私の5倍から10倍程度の広さの田んぼをやっているので、途中の欠株はほおってく。要は歩留まりの考え方であり、コストパフォーマンスを考えれその方が合理的であることは言うまでもない。私は少ないからこそ、しっかり手を入れて作りたいだけである。
もうひとつ技をかけたのがある。実は米作りで一番大変なのは雑草のヒエ対策である。俗に”ヒエ取り”という地味な作業を夏場の暑いさなかに地べたに這いつくばってやるのであるが。これを少しでも軽減しようとして生み出したのがこれである。名付けて”ヒエの一本取り”
土佐のカツオ一本釣りや、どこそかの一刀彫りと少し似ている?かもしれない。要は長い竹竿でヒエを一本づつつぶしていこうとする作戦である。鉄は熱いうちに打て、じゃなくて、ヒエは早いうちに取れ。ということは誰にもわかる。少し大きくなるとヒエは稲と区別がつかなくなってくる。そして穂を付けたが最後、落ちたヒエの種は翌年に芽を出し、何倍にもなって返ってくる。
田植をして1週間もするとヒエが芽を出してくる。数も少ないので畦きわならなんてことはないが、田んぼはまだまだぬかるんでとても歩き辛い。田んぼに入らないでやりたいのである。
竹竿の先をヒエの根元より少し上に当て、えぃと土の中に埋め戻すのである。さすがに強靭なヒエも、丸ごと土に埋められると再び成長することはできない。
かつて私は工場の合理化を職業とするエンジニアであった。コストの最も高いものは人件費であり、なるべく人を介在させないようなモノづくりが求められる。が、今の私の人件費はほぼゼロ。飯さえ食わせておけばいくらでも動く。金は無いが時間はいくらでもある。
1時間ほどやっていると少しづつ要領がつかめてきた。よしよし。
ふと我に返るとあることに気が付いた。この光景を見た人は私が何をやっているように見えるか、である。長い竹竿を持ち、田んぼの中でなにかと格闘している。
田んぼの中で泳いでいるものといえば、オタマジャクシ漁? まさか